「あれ?まだ、戻って来てないんだ……」
お風呂から出てリビングに行くと蓮の姿はまだなかった。
「蓮くん、遅いわね」
お母さんもそんなことを呟く。
蓮が私の家を出てから1時間は経っている。
何かあったとか……?
「ちょっと電話してみる!」
心配でいても立ってもいられなくてスマホを手にした時だった。
ピンポーン──♪
インターホンが鳴った。
私は急いで玄関に向かった。
そしてドアを開けると───
「悪い、遅くなった。
こいつが寄りたい所があるとか言って……」
目を細めながら遅れた理由を説明する蓮。
だけど、途中で後ろにいた人に口を塞がれて最後まで聞けなかった。
「それは言わなくていい事だから」
聞き覚えのあるその声に胸が高鳴る。
どうして……?