しばらく考え込んでいると突然、女子の甘ったるい声が響いてきた。


もう、それだけで分かる。


嫌でも分かってしまうんだ。



蓮が来たんだってことが……。



何気なく横目で見ていると、蓮に続いて翼くんも教室に入ってきた。


「蓮くん、おはよ~♪早速であれだけど~、今日はあたしと遊ぼ~?」


1人の女子が蓮に近付いてそんな事を口にした。


どうせまた、「いいよ」とか言ってその子と遊ぶんでしょ?


知ってるよ。


分かりたくもないのに分かってしまうんだ。


今までずっと見てきたから……。



そして、聞こえてきたのは──、


「……うん」


「やった~♪楽しみにしてるね~!」


ほら、やっぱり……。



蓮から目を逸らし窓の外を見る。



本当は少しだけ期待していた。


あの苦しそうな表情を見てしまったから。


もしかしたら、やめてくれるかも……なんて。


そんな期待、するだけ無駄だった。



きっと、私の蓮に対する“好き”の気持ちはだいぶ薄れていたと思う。



だってその証拠に、蓮が女子に笑いかけていても触れられていても、女子と距離が近くても、もう何も感じなくなっていたから……。