目の前に蒼空くんがいる。
蒼空くんは息が切れていた。
私のこと、心配して走ってきたのかな·····?
そんなことより、誤解を解かないと!
そう思って口を開こうとした時──
蒼空くんが“汐音”と呼ばれる
男の子と話をしていた。
「汐音、ありがとう」
「おう、どういたしまして。
ちゃんと家まで送ってやれよ?」
「分かってる。じゃあ、またね」
男の子との会話が終わると蒼空くんは
私の手を取り建物から出た。
「あの、蒼空くん·····
その、お昼のことだけど·····」
私がそう言っても歩くのをやめてくれない蒼空くん。
いつもだったら、振り返って話を聞いてくれるのに。
聞きたくないのか、無言で歩き続けている。
私もこれ以上切り出せなくて黙って
蒼空くんに手を引かれていた。