「······ごめん、何でもない。
俺、今日はもう帰る。またね、佐上さん」


口早にそう言って蒼空くんは屋上から出て行った。



「蒼空くん······?」


蒼空くんの急な態度の変化に戸惑う。


どうしたんだろう······急に帰るなんて·····。



用事でもあったのかな·····?


なんて、考えていたら


ガチャっと音を立てて夏美ちゃんが
屋上にやって来た。



「ごめん、お待たせ。早速食べよっか」


「うん」


私たちはお弁当を食べ始めた。



いつものようにたわいない話をして····



ふと、夏美ちゃんが私の首に触れた。



「氷菜、これ、どうしたの?」



「えっ?なに······?」



「これで確認してみなよ」



そう言って手鏡を渡された。


それを受け取り自分の首元を確認する。



そこには、赤い跡がついていた。


アザかな····?


でも、こんな所ぶつけないし·····



そこまで考えたところで、ふと
昨日のことを思い出す。



昨日、蓮に首元にキスをされた時
首元に痛みを感じたことを──。