神崎と一夜を過ごした·····。
それしか考えられない。
何より、その首筋の赤いマークが証拠だ。
「蒼空くん·····?」
俺が何も言わないことを不思議に思ったのか
佐上さんは不思議そうに尋ねてくる。
「······ごめん、何でもない。
俺、今日はもう帰る。またね、佐上さん」
胸が苦しくなって俺は一刻も早く
佐上さんの前から消えたかった。
だから、口早にそう言って俺は屋上から飛び出し
どこに向かうのかも考えずにひたすら歩いた。
その間、頭にあるのはさっきの赤いマークだけ·····。
“キスマーク”
それは、恋人同士が行為をする際や
気持ちを抑えられなくなった時に
自分のモノだという証に付けるもの····。
キスマークには色んな意味がある。
独占欲、浮気防止、何となく……、
練習として……など。
付ける場所にも意味があることを俺は知っていた。
神崎が付けたキスマークは首筋といっても
のどに近い部分だった。
つまり───
“噛みつきたいほどあなたが欲しい”
そんな想いが込められている。