「······ら!」
どこからか声が聞こえる。
「そら!」
今度ははっきりと聞こえた。
その声は、父さんが怒鳴っている声だった。
「なんで俺の言うことが聞けないんだ!
あんな子と遊ぶなって何度も言ってるだろう!」
バシッ──
「ごめんっ、なさいっ····!
おねがいっ、もう、たたかないでっ·····!」
「うるさいっ!」
バシッ──
必死に痛みに耐えるまだ小さい俺······。
これは、夢か····?
それにしては、妙に現実味を帯びている。
こんなにはっきりとした夢なんて
今までも見たことがない。
だとしたら、これは───
失っている6歳の頃の記憶か······?
「いいか?あの子のパパは病気なんだ。
そんな人の子供といたらこっちに伝染るだろ!
分かったら、もう関わるんじゃないぞ!」
「わ、わかった·····!」
「よし、いい子だ」
そう言ってあの頃の俺の頭を撫でる。
そんなことあるはずもなく
ただの差別だと今なら分かるのに
この時の俺は叩かれるのが嫌で
父さんの言うことに従うしかなかった。
そのせいで、俺の唯一の親友だった
“久野 遥翔(クノ ハルト)”を追い詰めてしまった。