「それが狙いでわざわざ買ったんだよ。
これで受け取るような相手だったら、あたし
氷菜の好きな人だなんて絶対に認めないもん」
そんなことを言う橋本さんに
俺は呆気にとられていた。
まさか、試すためだけに用意した物だったなんて
さっきまでの俺の葛藤は何だったんだ····。
「気持ちだけ受け取っておくよ」
俺はそう言って紙袋ごと橋本さんに返した。
「·····きみになら氷菜を任せられる。
氷菜のこと、よろしくね。
もしかしたら、あたしの所に来たことで何か
誤解させちゃってるかもしれないから····」
そういえば、さっき
少し悲しそうな顔をしてたような·····
そう思った俺は橋本さんに
お礼だけ言ってテラスへと向かった。
だけど、そこには佐上さんの姿はなかった。
何で、気付いてあげられなかったんだ····。
俺は神崎に電話をかけた。