「氷菜はほんと、昔からジンベエザメが好きだよな」
神崎のその言葉に俺の胸がチクッと痛んだ。
何だ、この痛み·····。
俺は神崎に嫉妬してる·····?
そんなはずはない。
俺は別に佐上さんのことは
何とも思ってないし·····。
ただ、放っとけないだけで·····。
そんな事を考えながら神崎と佐上さんの
2人のやり取りを黙って見つめる。
「ジンベエザメのマスコット
すっごく可愛いんだよ!!」
ほらっ!とバッグに付いている
ジンベエザメのマスコットを見せている。
「ほんとだなー!
それ、去年の修学旅行で買ったやつか?」
中学の頃の話か·····。
「うん!
だから、もうボロボロなんだよね」
そこまで聞いた所で俺は
耳を塞ぎたくなった。
そんな時、横から手を引っ張られた。
そっちに目を向けるとまだ4歳くらいの
子供が俺の手を握りしめていた。
1つ、疑問に思ったのが
その子供がずっとモジモジしていること。
まさか·····
「もしかして、おしっこ行きたいの?」
子供の前にしゃがんで聞くと
コクっと頷いた。
俺は神崎たちを見たけど楽しそうに話してて
気付いてない様だったから何も言わずに
その子供を連れてトイレへと向かった。