水族館に着くなり



「最初は何から見るー?」



神崎が言う。




佐上さんが即答する。



「ジンベエザメ!!」



ジンベエザメが好きなのか·····。



「それ、初っ端から見るのか!?」



神崎がツッコむ。



「後半になると混んで見れなくなっちゃうもん!」




そう言ったあと、俺は手を掴まれ
ジンベエザメのコーナーに強引に連れてかれる。






佐上さん、はしゃぐとこんな感じになるんだ。




1つ、君のことを知れた。



俺はそれだけのことで
嬉しさを感じていた。








ジンベエザメのコーナーに着いた時


嫌いな匂いが微かに薫ってくる。




「人多すぎ·····」



俺はボソッと呟いた。



「人混み嫌い?」



佐上さんが心配そうに聞いてくる。




「得意な人なんていないでしょ。俺は、ただ
色んな人の匂いが混ざるのが嫌なだけ」



本当は人混みが嫌いというか
俺の身体に良くないだけ。



だけど、香水の匂いが好きじゃないのは
本当のことだった。



だから、香水を付けない佐上さんには
少しだけ助けられている。



「でも、あんたの近くにいれば
ローズの甘い香りしかしないから平気」


俺がそう言うと顔を赤らめて
照れる佐上さん。


「そ、そっか····!」




本当に分かりやすい。



こんだけ分かりやすいと誰が
好きなのかさえ分かってしまいそうだ。




「あっ、ジンベエザメ!」



神崎が声を上げた。



その声に佐上さんが食いつく。



「どこどこ!?」



「右から来るよ」



佐上さんが右に顔を向ける。




「うわぁっ····!」



感嘆の声を漏らす佐上さん。




「かっこいい····!」


ジンベエザメに見とれている。



それを愛おしそうに見る神崎の姿が
俺の目に映る。




神崎は佐上さんのことが好きなんだ·····。