──“氷菜は蒼空のことが好き”。


俺の中でそれは決まっていた。



氷菜の態度を見ていればすぐに分かる。



今日だって、氷菜はずっと蒼空のことを
気にかけていた。




氷菜の方から手を掴んだり

あんなに必死になって心配したり


そんなこと、俺には1度もしていない。




完全に俺の失恋は決まっていた。







俺は蒼空に電話をかけた。



3回目のコールの後

蒼空が電話に出た。




『もしもし····』




「·····氷菜に言った」




俺はそれだけ言った。




『そっか·····神崎·····
1つ、聞いてもいい?』



静かな声でそう言う蒼空。




「ああ、いいよ。なに?」



──何を聞かれる?



少しだけドキドキしながら次の言葉を待つ。





『神崎は、佐上さんのことが好きか?』




どうして、そんな事を聞くのだろうか。


俺には分からなかったけど·····




「·····好きだよ。ずっと好きだった。
中学の頃から、ずっと·····」



俺は正直に答えた。










しばらくの沈黙のあと


『そっか·····分かった。
わざわざ電話ありがと。それじゃ····』



そう言って一方的に切られてしまった。




何が分かったんだよ····?




俺は、何か、とんでもない事を
してしまったんじゃないか?




電話越しの蒼空の声は悲しそうだった。





「まさか、あいつ·····!」



俺に気を遣って自分の気持ちをなかったことに
するつもりなんじゃ·····?




そんな事したら、氷菜が悲しむに決まってる。





くそっ、言わなきゃ良かった·····!






蒼空はそういう奴だった·····。










蒼空、頼むから

氷菜を泣かせるような事だけは

絶対にしないでくれ──。









そんなことを祈りながら俺は
ペンギンを眺めていた。