その次の日、何気なく廊下を歩いていると向こうから髪を一つに結んだ氷菜が登校して来た。
髪上げてるのも可愛いな……。
素直にそう思った。
周りの男の視線が氷菜に向けられているのが気に入らなくて、気付いたら俺は氷菜に近付いていた。
だけど、氷菜は俺から逃げるように反対方向へと歩き出す。
「おい、何で逃げるんだよ!」
俺がそう叫ぶと氷菜はそれを無視して駆け出した。
「あっ、おい!」
俺も駆け出す。
「氷菜っ!」
そう叫んで氷菜の腕を掴む。
氷菜は辛そうな顔をした。
「何で、逃げるんだよ···!」
そう言うと氷菜は涙目になりながら、
「お願いだからもう、私のことは放っといて……」
「は?なに言って……」
「もう、私に構わないでっ……!」
「……っ!」
必死にそう言った。
掴んでいる手の力が弱まる。
氷菜はその隙に俺の手を振りほどいて振り返ることなく走り去った。
「俺は、バカだ……。
何で、こんな事に……くそっ……!」
翼のアドバイスなんて聞かなきゃ良かった。
そしたら、こんな事にはならなかったのに。
俺は酷く後悔した。
俺はこの日、女と遊ぶのを辞めると決めた。
もう遅いことは分かってる。
だけどもう一度、氷菜と話したいから──。
だから、これから挽回していくんだ。
氷菜……こんな俺を許してくれ。