一言一句丁寧に二人はサインしていく。


…書き終えた。

「…これで勝利は一緒に帰れますか？」

震える声で問いかけた。

「ああ。」

これで、私は。勝利と一緒に帰ることができる。

やっとここまでこれた。


嬉しくて、嬉しくて私は泣いてしまった。

涙が止まらなかった。


隣にいる勝利がそっと頭をポンッとしてくれて、有紗と悠里は笑顔だった。

そして、その後。

荷造りを終えた私のもとに寮母さんが訪ねてきた。

「寮母さん、こんにちは。」
「藤川さん、こんにちは。」

そう言ってふんわり笑った。

「藤川さんは、もとの世界に帰ったら高浜くんが帰れるように頑張ってくれるのよね？」
「はい…！」

とりあえず、電話して会社に行ってみようと思っているけど、…具体的にどうすればいいのかはまだイマイチわかっていない。

そんな私の心中を察してか、寮母さんは言った。

「これを。」

そして、差し出してきたのは白い封筒。

「多分、藤川さんが行っても相手にされない。だから会社に行って、これを渡して。会社宛の手紙が入ってる。きっとこれでうまくいく。」