既にベッドに押し倒された状態のまま彼の顔を見上げた。

「待ちたくない。今すぐ和桜が欲しい」

そう言いながら熱い眼差しで再び私の首筋に唇を当ててくる。

「私は、ちゃんと醍と話がしたい!」

醍の動きが止まり、彼の顔が私から離れその瞳がまっすぐに私を捉えた。

「話?」

「そう。これからのこと」

彼は私からゆっくり体を起こすとベッドの端に座った。

乱れた前髪とはだけたブルーのシャツが薄暗い部屋の明かりに照らされて妙に艶っぽい。

それは大人の色気。普段の少年のような目で笑う彼とは別人のように見えた。

「俺も話したいことある。だけど、その前に和桜を抱きたかったんだ」

「どうして?」

彼は私から顔を背け小さく何かを呟く。

「・・・・・・最後かもしれないから」

そう言ったように聞こえたけれど気のせい?

うつむく彼の横顔がとても苦しそうで思わず抱きしめたくなる。

「醍から先に話して」

そんな彼の姿に胸騒ぎを覚えながら言った。

今までにない空気が二人を包んでいる。何か話していないとその空気に押しつぶされそうだった。

「パリに発つ日が正式に決まったんだ」

「いつ?」

胸の奥がきゅーっと軋む。

「来週末。急なんだけど、パリでお世話になる友人の都合でどうしてもその日がベストらしくってさ」

「そうなんだ。来週末なのね」

その日がいつか来るとはわかっていたのに、その日が明確になるとこんなにも寂しくて辛い。

不安でどうしようもない気持ちになる。