「なんだかトゲのある言い方だな」

「そんなことないけど」

「俺だって好きでテレビに出たり雑誌のモデルやってるわけじゃない。もうすぐ日本を離れるならそれなりに吉丸の広告塔になれって親父に言われて無理矢理やらされてるんだ」

そんなことわかってる。好きこのんでそんなことする醍じゃないってことくらい。

自分の気持ちが醍を遠ざけようとしている。

自分とは違う世界の人だって必死に叫んでるだけ。

「和桜はどう思ってるのかわからないけれど、俺は全然変わってないから」

「変わったわ。そのロングコートだって、妙に大人びてるし」

「これは」

醍が一瞬言葉に詰まる。

「和桜に早く追いつきたいからだ」

「私に?」

どうして醍が私に追いつこうとするの?もう既に追い越してずっと遠い場所にいるのに。

私は首を傾げて彼のきれいな横顔を見つめる。

彼は車のスピードを上げ、私のマンションには向かわずそのまま高速に乗った。

「どこへ行くの?」

窓の外に流れる暗い景色に目をやりながら尋ねる。

「ゆっくり二人で話ができるところ」

しばらく走ると高速を降り、都心に着いた。

高層ビルが建ち並ぶ一角にある高級ホテルの地下駐車場に車は入っていく。

車を降り、彼は私の手を取ると一階フロントで部屋のキーカードを受け取り最上階へ向かった。

その横顔は普段とは違って恐いくらいに緊張している。

部屋に入るやいなや私は醍にきつく抱きしめられた。

「会いたかった」

彼は自分のコートを脱ぎ捨てると私の唇を熱く強く塞ぐ。

そして私の上着をはぎ取り、ブラウスのボタンに手をかけていく。

「ち、ちょっと待って」

そんな普段よりも強引すぎる醍に疑問を感じずにはいられなくて彼の動きを制した。