醍がこの場所にいる方がいい。

その方が自然だ。

リビングで彼の気配を感じるたびに胸が躍る。

温めたチキンライスの上に卵をのせたら、微妙にその卵が崩れてしまった。

「あー、失敗」

やはり慣れないことをすると失敗する。

「ごめんね。卵がうまく巻けなかった」

彼の前にオムライスを置いた。

「いいさ、味の方が大事だから」

「味の保障もないんですけど」

「食べてみりゃわかるさ。じゃ、いただきます!」

醍は手を合わせるとすぐにオムライスに食らいついた。

「思春期の少年みたいな食べ方」

思わずその姿に噴き出す。

「うまいよ」

彼はオムライスを頬ばったまま私の方に顔を向けて満足気に笑った。

「よかった」

私もその隣で自分の作ったオムライスにスプーンを入れる。

いつまでここで醍と一緒に食事をとったり、笑ったり、話したりできるんだろう。

こんな幸せな時間はあとどれくらい続くの?

醍の横顔を見つめながらふと思う。

掴めそうで掴めない危うい関係。

これで私達はちゃんと付き合ってると言える関係なんだろうか。

彼は私のことを好きだと言ったけど、私はその言葉に対する自分の気持ちをまだ伝えられていない。

なのに、彼に抱かれた。

醍はそんな私のことどう思ってるんだろう。

彼にとっては通りすがりの恋の一つなのかな。

だってまだ彼は26歳なんだもん。恋の先にある現実はまだ見れない。

だって彼の未来はこれから。未知数で無限大。

空を掴むために醍にはやらなくちゃならないことがたくさんあるはずだから。