その言葉に自分の事を見透かされたような気持ちになって体が熱くなった。

私が絵を見せたくないって、どうして見せたくないのかも全て理解した上で言ったような、そんな印象を受けたからだろうか。

初対面の彼に私のことなんかわかるはずもないのに。

だけど、その言葉は今の私にはとてもありがたいことは確かだった。

「・・・・・・ありがとう」

私は小さく呟くと、スケッチブックをゆっくりと広げた。

ゾウに視線を向け再び描こうとしたけれど、彼のペンが紙を走る音が心地よく耳に響き、その絵を見てみたい衝動にかられる方が先に立つ。

「・・・・・・描けた」

どれくらい経ったんだろう。私の絵は全く進んでいなかった。

彼はペンとスケッチブックをベンチの上に置くと、ぐーっと大きく伸びをした。

思わず私の手も留まり、固まる。

そっと彼の方に目線を向けると、彼と目が合ってしまい慌てうつむいた。

心を見透かされたようで一気に顔が火照る。

「俺の絵、見てくれる?」

彼はそう言うと、私の前に自分のスケッチブックを何のためらいもなく差し出した。

「え、これ・・・・・・?」

思わずその絵に見入る。

ここから見えるゾウの姿じゃないゾウがそこには描かれていた。