慌ててチェストの上に置いたサングラスをかけて扉の前に立つ。

「和桜さん、おはよう。そろそろ出ようと思うんだけど準備はできた?」

「うん」

「ドア、開けても大丈夫?」

相変わらずの気遣いにくすっと笑ってしまう。

「いいよ、全然」

私はその扉を自ら開けた。

扉の向こうにコールテンの水色シャツの上に黒革のジャケットを羽織った醍が私を見下ろしている。

朝早いというのにすっきりと爽やかな彼と目が合うと昨晩のことが蘇ってきて顔が熱い。

そんな私の気持ちをよそに、彼はきょとんとした顔で私を見つめて言った。

「それ、どうしたの?」

そう言うと、一気に表情が緩み噴き出す。

「それって・・・・・・?」

「サングラス」

醍は口を被ってケタケタ笑い続けている。

「そんなおかしい?」

私は腰に手をやり、少し不機嫌な口調で返した。

「いや、ごめん。だって、こんな朝っぱらいきなりサングラスで現れるんだもん。誰だって意表付かれるよ」

それは、否定しないけれど、ちょっと笑いすぎじゃない?

「それに、和桜さんとサングラスは違和感ありすぎ」

「違和感?」

「似合わないってこと」

そっか、そういうことね。

一瞬サングラスを取ろうかと手を当てたけれど、いやいやまだ取れないんだった。

「今日は朝からすごく瞼が腫れてるの」

「そうなの?見せて」

「いやだ」

そう言う私の言葉は彼に聴こえなかったんだろうか。

拒否した私の腕をぐっと掴み、彼はいとも簡単に私のサングラスを取り上げた。

そして、私に顔を近づけてじっと私の目を見つめる。

正確には私の瞼を見つめていたんだけれど。

腕を握られ、こんな至近距離できれいな醍の顔が近づいてしまったら、必死に平静を装ってた私の胸が一気に鼓動を速めた。

昨晩の寝言が思い出されて体中が火照っていく。

「これ、急になったんだったらアレルギーの一種かもしれないね。腫れ方が普段よりきついだろう?」

「え、そうなの?」

ドキドキしながらも、彼の言葉に反応する。