ドキドキしないと言えば嘘になるけれど、こういう気持ちはきっと恋とは違う。

彼の言葉も、話す時のキラキラした瞳も、笑うと見える白くてきれいな歯も、細くて繊細そうな指も、私にとってはひっくるめて居心地のいい存在ってだけ。

一緒にいるといつも楽しくて、ずっと彼を見ていたいと思う。

それは、彼のことをほっとけない弟みたいに感じているから。

・・・・・・恋じゃない。

それはまるで呪文のような響き。

その時、醍が寝返りを打ち、こちらの方に顔を向ける。

でもよほど眠たいのか、まだ目はつむったまま。

微かに寝息も聞こえる。

長い睫が時々震えていた。

きれいな顔。いつまでも見ていられる。

「な、お」

目をつむったまま、彼の口が動いた。

「す・・・・・・きだよ」

彼の目は閉じたまま。そしてまた寝息が聞こえてきた。

寝ぼけてるんだよね。

私の夢でも見てる?

なお、すきだよ・・・・・・って言ったような気がしたけれど?

急激に体が熱くなっていく。

胸の鼓動が激しい。

まさかね。こんなこと言うわけがない。

夢の中で、たまたまそんなシチュエーションにでもなっただけだ。

なったとしても、普通そんなこと言わないか。

いやいや、だめだめ。

私は自分の前髪をくしゃくしゃっとして頬をパンパンと両手で叩いた。

今日は私もお酒飲んでるし、酔いがまだ回ってるだけかも。

私は立ち上がり、キッチンの流しにコップを置くとバスルームへ急いだ。

醍が起きる前に先に入っちゃおう。

ドキドキはまだ止まらない。シャワーをいつもより熱めの温度に設定して頭から勢いよくかぶった。