話しているうちに、少し興奮してきたのか彼の頬は紅潮していた。

「その雑誌、実はあなたに会う直前に読んだわ」

「え?」

彼は目を丸くして私に顔を向けた。

「いつも定期購読している雑誌なの。まさか、その雑誌に醍さんが乗ってるなんて思いもしなかったから、すごく驚いた」

「そうだったんだ」

醍はふぅと短くため息をついて足下に視線を落とす。

「あなたって、出会った時から普通の人と少し違うなぁって感じてたけど、すごいお家柄の人だったのね。なんだか納得できたわ」

「本当はこういう形で和桜さんには知られたくなかったんだけどね」

「どうして?」

彼は口もとを緩めるとなぜだか首を横に振っただけだった。

そして、再び顔を上げると私に尋ねる。

「俺の言ってること間違ってると思う?」

「わからないわ」

私はコーヒーを一口飲むと首を横に振り、言葉を続けた。

「だけど、間違ってるか間違ってないかは一度やってみないとはっきりしないと思う」

そう伝えながら、彼の顔をしっかりと見つめた。

醍も私の目をじっと見つめ返し、こくんと頷く。

「俺もそう思ってた」

「じゃ、具体的な案はもう考えてるの?」

「もちろん。見てくれる?」

私はそのまっすぐな目に吸い込まれそうになる。彼は自分のバッグからノートブックを一冊取り出した。