雑誌でこちらに微笑む醍はやっぱりどこかの俳優みたいにきれいな顔とスタイルで、一般人にしておくのはもったいないくらい。

いや、一般人ではないか。

その姿を見ながら、はぁ~と息を吐く。

私、とんでもなくすごい人と食事してたんだ。実感がまだ沸かない。

全てのクエスチョンが一気に解けていく。

さらに読み進めていくと、醍には自分なりの伝統文化を守るための持論があった。

このまま伝統とういう言葉だけにぶらさがっていたら、そのうち現代の波についていけなくなる恐れがある。そのために、今ある伝統美を新しい姿に変化させなければならないと。

『真の伝統美とは、古いものに拘るだけではなく現在に通じるものでなければならない。
そのためには、現代の美を掲げながらもっと誰でもが身近に触れられる新しい伝統美を生み出すことが必要』

相変わらず、年相応には思えない彼の言葉が書かれていた。

あんな少年みたいなキラキラした目で悟ったようなことを語る彼は、どうりでどこか突き抜けているはずだ。

日本の伝統文化をこの先担う彼が、私なんか相手にするはずがない。

わずかでも彼からの電話を期待していた私がこっけいに思えて一人でこっそり笑う。

そしてそんな自分が恥ずかしくなって、カウンターに肘をつき両手で顔を被った。

胸の奥がドクドクしている。

体中が熱く震えていた。