真結は最近お見合いをして、5歳年上の彼と出会ったらしい。

研究職に就く彼は来月からテキサスに海外出向になったので一気に結婚話が進み、とりあえず籍だけ入れて自分も一緒にテキサスに着いていくという。

「式は向こうでお互いの家族だけ呼んで挙げるわ」

「そうなんだ。いい人と出会えてよかったね」

「ほんと、お見合いも馬鹿にできないわよ。和桜もまだ見つからないならお見合いも手よ」

「はいはい」

このくだらない会話を真結とするのも今日が最後かもしれない。

幸せになった彼女を見送ることができて、それはそれでよかったかもね。

「でさ、珠紀のこと聞いた?」

「珠紀?」

いきなりこの世で一番思い出したくない名前が真結の口から出てきて体が硬直する。

フラッシュバックしそうになる自分を必死で留めた。

それなのに・・・・・・。

「珠紀、いよいよ結婚するらしいよ。和桜の元彼と。なんだかんだ長かったわよねぇ、結婚まで」

その後、真結が何を言ってるのか耳には入ってこない。

珠紀と彼に関する情報は自然と耳が塞がれるようになっている。

だけど。

・・・・・・二人は、結婚する。

その言葉は、耳を塞ぐ前に私の中心にストンと落ちてきた。

こんなに誰かを奈落の底に突き落とすような二人が幸せになんかなるはずない、神様はそこまで残酷じゃない。

きっと二人は最終的には結ばれず、別れるんだと漠然と信じていたのに。