相変わらずラフな恰好の彼は、濃紺のシャツに白いジーンズを履いていた。

「ハンカチは、だ、大丈夫です。だけど、あなた・・・・・・どうして?」

まさかこんな場所で再会するなんて、驚きのあまり言葉にならない言葉を必死で吐き出す。

自分がどうしてこんなにも動揺しているのかもわからなかった。

吉丸さんはふふっと笑うと、前髪を掻き上げながらもう片方の手で目の前の絵を指刺した。

「これ、観に来た」

「これ?」

「ああ」

「この絵?」

「何度聞くの、だからそうだって」

彼はいたずらっぽく微笑む。

「もしかして、このTUYUKUSAさんとお知り合いなの?」

ドキドキしていた。まるで恋しているみたいに。

吉丸さんは「うん」と頷いた。

彼はTUKUSAさんを知ってるんだ。

ただそれだけでこの絵と繋がったような喜びに胸が震える。

「好きなの?この絵」

「ええ、出会った瞬間から」

「・・・・・・そう」

彼は私の方を一瞥すると、軽く息を吐き目を伏せた。

「今度TUYUKUSAに会ったら伝えておくよ。和桜さんが君の絵に恋してるって」

「恋してる、って?!」

自分の名前をいきなり呼ばれたことに加えて「恋」という言葉が彼の口から出た瞬間、顔が沸騰する。

自分よりも明らかに年上女性を捕まえて「恋してる」なんて表現使うなんて、馬鹿にされてるみたいだ。

しかもそんな親しい間柄でもないのに。

熱い顔を両手で押さえて、この場を逃げ去りたい気持ちになる。

一気にその言葉がトラウマとなって私に襲いかかった。

恋なんて、もう絶対しないんだから。