そして、『無名の芸術家たち』の展覧会は翌日から開催された。

無名とはいえ、事情通の人達はビッグネームも出展しているということを知っているからか、ここ数年ではかなりの盛況だった。

新聞記者が訪れインタビューも受けた。

この盛況ぶりなら来年も第二弾が開催されるだろうと館長も嬉しそうに笑う。

またあの『TUYUKUSA』さんも出展するだろうか。

他にどんな絵を描くのか見てみたい。

毎朝私はその絵の前で動けなくなる。

観ているだけで幸せだった。

「ほんと好きねぇ」

植村さんがそんな私をからかった。

私はうなずきながら、再びその絵に視線を戻す。

このキラキラしたゾウの涙はどうして流れているのかしら。

何を見て泣いてるの?

その切り取られた場面の奥にたくさんの物語を感じていた。

まるで誰かの人生を見ているような。