「初めてにしては上出来だったわよ。ほらあのチーフの山田さんも帰り際和桜ちゃんのこと褒めてた」

「ほんとですか?でも、植村さんがそばで助けてくれてたからです。私一人じゃとてもここまでできませんでした」

植村さんも自分の湯飲みを持ってデスクに座り、一口飲むと続けた。

「あなたが選んだあのラストに持って来た作品、素敵な絵だったわね」

「ええ、一瞬で心が持っていかれるようなインパクトがあって」

「あのキャンバスは普通のキャンバスじゃないわ。布地に絵を描いてる。ほら、着物とかに使われるようなしっかりした生地に木枠を自分で付けたんじゃないかしら」

「そうなんですか?どうりで他と雰囲気が違うなぁって」

着物の生地だったんだ。

「あの描き方もどことなく友禅っぽいっていうか和の雰囲気がしたわ。もともと着物の絵柄って露草の薄い青色で描かれてるの。作者名も『TUYUKUSA』だったからひょっとしたらそういう関係の職人さんの絵かもしれないわね」

さすが、植村さん。そこまであの絵から読み解くなんて。

友禅か・・・・・・。

日本の誇れる伝統美。言われてみたらまさのあの絵の品格を象徴しているのはそこにあるような気がした。