「ラストにこの絵を選ぶ君はなかなかいいセンスをしているね。普通なら他の二点のようにガツンと派手目のインパクトが明らかに強い作品を選ぶんだが。確かに君の言うようにラストにこの絵を持って来たら逆に印象深くて、全てが引き締まるような気がする」

チーフは優しく微笑むと私の肩を叩き、

「ありがとう」

と言った。

私は慌ててチーフに会釈をする。

こんな私でも少しは役に立てたことがうれしかった。

胸の奥が温かく膨らむ。

もう一度、ゾウの絵に目を向ける。

作者は・・・・・・?

絵画の右下に小さく「TUYUKUSA」と書かれてあった。

つゆくさって、あの露草のことだろうか。

謎めいていて作者がどんな人物なのか想像が膨らむ。

一体どんな人が描いたんだろう。男性だろうか、それとも女性だろうか?

繊細なタッチとこのシンプルな印象は、女性のような気がしていた。

それか、女性のように繊細で優しい男性かもしれない。

チーフがスタッフ達を集めて何やら話をし始めた。トップとラストの展示作品が決まったことを報告しているようだった。

その後はベテランの植村さんと一緒にセッティングのお手伝いや、配置の相談を受けながら無事全ての展示をし終えた。

事務所に戻り腰を下ろすと一気に緊張がほどけ心地のいい疲れが押し寄せる。

「はい、お茶」

植村さんが私の前に緑茶を淹れて置いてくれた。

「ありがとうございます」

湯気の立った湯飲みをそっと両手で包み植村さんの顔を見上げた。