パリ市内へ向かう為リムジンバスに乗る。

目の前に華やかなパリの街並みが広がり、エッフェル塔が少し離れた場所で悠然と出迎えてくれた。

おしゃれで伝統と文化に築きあげられている場所。

醍はここで自分の可能性にチャレンジしてるんだ。

日本ではできないって言ってた彼の言葉が蘇る。

確かにそうかもしれないって、この街に降り立ち初めて感じていた。

街はまだお昼過ぎで、活気に溢れている。

お腹が空いたので近くにあったカフェに入り片言英語でなんとかサンドイッチが頼めた。

こんなに英語が苦手な私でも何とかなるもんだと自分自身に感心する。

だけど、サンドイッチの味はやはり日本の物の方が口に合うななんて思っていた。

いやいや、こんな暢気に講釈を垂れている場合じゃない。

私は醍に会いに来たんだから。

腹ごしらえが済むと意を決して人通りの多い通りに出た。

醍の新規プロジェクトの製作発表が行われる文化会館までたどり着けば、醍の連絡先がわかるかもしれない。

文化会館を英語に直してその場所がどこにあるのかを街ゆくフランス人に尋ねるも、皆小首を傾げるだけで一向に前に進まない。きっと私の英語が伝わっていない。もっと英語勉強しておけばよかったなんて今さら後悔しても始まらない。

気持ちは焦るばかりで、その場所はわからないままエッフェル塔はそんな私を黙って見下ろしている。

日は静かに落ちていき、辺りは少しずつ薄暗くなっていった。

知らない街、言葉の通じない街で日が暮れていく中、一人ぼっちというのはこんなにも不安になるものなんだ。

薄暗くなった街を途方に暮れて歩いていたら、ドンと横に立っていた二人組みに肩がぶつかった。