運送業者と話をしている館長を見つけると、すぐに駆け寄っていった。

「館長!」

「ん?どうした?」

「私明日から少しお休み頂いてもよろしいですか?」

「休みって?」

「どうしても、どうしても行かなくちゃならない場所があるんです」

「明日から展示会だっていうのに?」

いつも優しい館長だけど、急で勝手な私の申し出に眉をひそめた。

「すぐ戻ります。だから、ほんの数日だけ」

私、何言ってるんだろう。

こんな無茶なこと。植村さんと今回の展示会は担当引き受けたのに。

「大丈夫よ。私がいるから」

その時、背後で声がした。

振り返ると、満面の笑みで頷く植村さんが立っている。

「なんだかよくわからないけれど、ここまで和桜ちゃんが自分の感情を表に出すことなかったから。搬入さえすめば後は館長と私でなんとかなるわ。ね、館長」

「ありがとうございます!」

私は植村さんに深く頭を下げた。

「しょうがないな。展示会が終わるまでには戻って来てくれよ」

館長はまだ納得がいかない様子ながらも、渋々承諾してくれた。

「本当にすみません。すぐに帰ってきます」

「さ、搬入作業はこれからスタート。はりきっていくわよー」

植村さんに背中を押され、またスタッフ達が待つ会場へ戻っていく。

「植村さん、本当に勝手なことしてごめんなさい」

「このお礼はまた今度ゆっくりしてもらうからねぇ」

そう言っていたずらっぽく笑うと植村さんは私の頭をよしよしと撫でた。


醍に会わなくちゃいけない。

今も色あせない彼の絵に、自分は一体何やってるんだろうって。

何も変わってない。

きっとそこに醍はそのままいる。

そして私も色あせた世界になんかいない。

ずっとそばに醍を感じていた。ずっと一緒だったのに。

どうして、離れてしまったんだろう。

TUYUKUSAとSORAの絵が並んで掛けられている。

まるで二つの絵は一つの絵のように見えた。

どこにいても私達は一つ。繋がっているんだ。

触れていなくてもお互い掴んでる。しっかりと。