俺の父親は医者だ。


結構有名らしいけど
専門は心臓外科。
でも知識はあるはずだ。


『その二つだと絞りきれない所はあるが
脳腫瘍の線が濃いだろうな。』


俺の中にほんの少しだけあった
希望が打ち砕かれた。


”脳腫瘍”


『おい、どうした、陽輝』


電話の向こうで呼ばれてるけど
返事をするにも声が出せない。


『陽輝』


「父さん、さ…」


やっと出た声は
今にも消えてなくなりそうなものだったけど
構わず続けた。


「病気の子に俺は何ができる…?」


もう誰でもいいから
俺に答えを教えてほしかった。


父さんは何も言わない。


「なぁ、教えてくれよ…。」


気付けば俺の頬には
一筋の涙が伝っていた。