Contract marriage ―契約結婚

「どうして…? 紘一さんのことを…庇うのですか?
あなたも、あんな事、納得してしてるって言うんですか?
あんな異常なこと…っ!」

「それは…」

吉澤が、何か…を言いかけた時…

「吉澤、もういい…」

エントランスから聞こえた声に、2人は振り返った…

「紘一さん…、」

紘一の姿を見るなり…、悠夏は咄嗟に視線を逸らした…

「説明する…。悠夏…座れ」

いつもの高圧的な態度…に、気圧され…悠夏は仕方なく…先ほど座っていたソファに腰を下ろした…

紘一は、その悠夏の目の前に腰を下ろし、吉澤は2人の様子をすぐ近くで見守る…

「お前と吉澤が、不倫をしてるということ…知ってた」

「…不倫だなんて…っ」

「…不倫だろ? お前は、俺のなんだから…」

全く…、返す言葉が見当たらない…

先に、不貞を犯したのはこちらなのだから…

紘一に対して、不満があって…のことではない…

だから、尚更…自分の甘さが招いたコトだった…。


「…で、吉澤は、俺にとっても弟だ。公にする訳にも…いかないからな。
人の噂で、ウチや会社に左右されかねないからな。
で、公認することにした…吉澤は了承した」

「そんな…っ! 私が吉澤さんと付き合うこと、いいって言うこと?」

「…そうだよ。赦す…ただし、他の人間にはバレることにはならないように。
俺も、お前のことを手放したくないから…3人で…というのを提案した」

紘一の思惑が読めない悠夏は、猜疑心を含んだ視線を向ける…

「本当に? 」
《信じられない…っ。

そんなこと…っ》

「ただし、時々は、3人ですること…
その方が楽しめるだろ…?」

「紘一さん…、3人で…なんて。私は、いやです!


「お前に、拒否することなんて出来ると思っているよか?」

反論した自分の言葉を、いとも容易く…覆した紘一…

悠夏は、いたたまれなくなり…泣くことしか出来ない…

「紘一さん、私のこと、……っ」
《愛情はないのね?

『愛してる』…と、言っていたのに…


そんな提案をする…なんて、愛情がない…としか、思えない。。》


その言葉を、飲み込み…

「時々、この関係をするなら…あとは、2人で好きなようにしてもいい…」

と、紘一は、それだけ言うと…すぐ様腰を上げ…その場を立ち去った…