悠夏の反応に、すぐ様、掴んでいた手を離した吉澤…

「ホットココアでも…入れましょうか?」

そぅ、微笑んだ吉澤…

その笑顔に、胸が傷んだ…

自分は、この人を傷つけたのだ…

笑顔を向けられる資格などない…


この人の笑顔を見ると…、その分、傷つけたのだと身に染みて…切なくなる…

視線を逸らした悠夏だった…が、その表情を盗み見…胸が微かに傷んだ…

「頂きます…」

と、それだけ答えていた…


吉澤に連れられ…、ダイニングへと向かった…

「……っ」
《笑わないで…、笑顔を向けないで…

私は、あなたを突き放しておいて…

どうして、笑顔でいられるの?》


「どうぞ。暖まりますよ」

と、またも…笑顔を向ける吉澤…

目の前に差し出されたカップに、ホットココアが入れられた…

「ありがとう…」

その差し出されたホットココアを1口、口にした…

「あったかい…」

そぅ、呟いた直後から…、涙の粒がつたい落ちた…

「悠夏さま、どうかしましたか?」

悠夏の涙に驚いた吉澤は、絨毯に片膝をつき、悠夏の方を見上げる…

「…私…、」

吉澤に至っては、子どもを失い…まだ精神的に落ち着かないのだろう…と、解釈し…

「大丈夫ですょ、きっとまた…お子さまは…」

「っ違うの…!」

吉澤が言いかけた言葉を遮り…急に、声を荒らげた悠夏…

吉澤は、悠夏の対応に、笑顔を向けていた表情が揺らいだ…

「…悠夏さま…?」

「私、紘一さんは、私の身体を気遣ってくれる。
以前よりも優しい…」

「それは、悠夏さまを大切に…」

吉澤の言葉を遮るように…悠夏は、首を左右に振った…

「…違うの…っ!
私は…、あの人に愛されているのかもしれない…。確かにそう…。でも…、私は、あの人の妻でいる資格はない」

悠夏の言う…言葉の意味が理解できない吉澤…

「悠夏さま、落ち着いて。紘一さまが悠夏さまの身体を気遣って、大切にしてくださっているのなら…」


「私は、紘一さんが話した…子どもの頃の話…。
紘一さんも辛かったのでしょうけど…
私には、あなたが、2度もお母さまを亡くして…幼かったのに…
どんな気持ちで過ごしてきたか…、
それなのに、私は、あなたを突き放して」

「……っ」