そぅ、いつにも増して…素直に悠夏に言う紘一に…、以前とは違い…心を開いてくれているということに…悠夏は、嬉しかった…


「この手紙、母親の遺品か見つけた。」

と、紘一は、その絵本に挟まっていた…白い封筒を悠夏に見せた…

「母が、生前…俺たちが大人になった時のために、用意していた。俺の母は、持病があったから…子どもは俺1人…と、決めていたらしい…」

「持病?」

差し出された手紙、悠夏は読んでも良いのか迷った…


が、この手紙は、紘一の母親が紘一に宛てたもの…

「心臓が…。それは、この手紙を読んでから気づいたが…」

「…お母さまは、命懸けだったのですね。」

「母が、父親の愛人との子どもを引き取って育てたい…と。
だから、奴の祖父母に懇願していたんだ…」

それは、誰のことを言っているのか…?

あえて、口にしなくても分かる…

その紘一の言葉に、悠夏の瞳が一瞬揺らいだ…

「…吉澤 匡。」

「…そうなのですね…っ」


「吉澤の母親は、奴が1つの時に亡くなっている。俺の母がそれを知り…吉澤の祖父母に頼み、育てさせて欲しい…と、頼んだそうだ…
奴が、連れてこられた時、自分も気づいていたはずなのに…認めたくなかった。
父親が浮気して、出来た子ども…自分の弟だとは…認めたかなかった…」

「でも、お母さまは、分け隔てなく…育てたかったのでしょうね?」
《2人には、私なんかが入り込めないような過去がある…

紘一さんと、吉澤さんには、大切な人を失った…という過去が…


私には、2人の心の傷を埋めることはできないでしょうね》


紘一の心の傷に共感する…と、ともに悠夏は、もう一人の人のことを思った…

「……っ」
《紘一さんも傷ついたのでしょうけど…

吉澤さんは…っ?

遠い国での6年…、まだ13歳だったのに…


紘一さんとやり直す…と、突き放して置きながら…

私の心は、どうして《これで良かったの?》と、思えてしまうのか…?》