「その時に、思い出した。ちょうど15年前に、会っていた娘が成長している。あの時の、あの人との約束を果たすことを…」

紘一は、悠夏の手を握る手を強め…

「お前の母親が亡くなっていた…ことは知らなかった。尚更、約束を果たすべきだ…と、思えてならなかった。
多少、強引ではあったが…」

その紘一の言葉に、悠夏は、微笑んだ…

「ホント、強引。
ちゃんと話してくれれば…こんな遠回り…しませんよ? 」

と、吹き出して見せた悠夏…

その、悠夏の言葉に、胸が締め付けられた…

「…初恋の人の娘だから…なっ。絶対に、美人になっている…と、思っていた」
いま、思えば…アレが初恋だった…と、言ってもいい…と、今にして思える。

「初恋? お母さまがですか?」

悠夏のその笑顔に、この時間が続けばいい…と、思った。

紘一は、悠夏の身体を抱きしめた…

「……っ」
《失いたくない…、もぅ2度と…

自分を変えてくれた人の為にも…


そして、もう1つの約束を、まだ果たしていないでいるということ…

自分には、時間が残されていない…》

…ということに…