両肩を震わせ…、紘一から視線を逸らした悠夏…

紘一は、我に返り…両肩を震わせている悠夏の肩に触れようとした…


…が…


「そんなに大切なモノなら、無造作に置かなくてもっ!」

泣き出しそうになりながら…逃げるように…、部屋を出て行った…


その時、残された紘一は、急に胃のあたりに傷みが走り…、すぐに追いかけることが出来なかった…

倒れそうになりながら…、部屋のドアにもたれ掛かる…



深いため息をついた…呼吸を整える…

感情を抑えられない自分に、嫌悪感が増した…

「……っ」
《悠夏は、何も悪くない…

分かっている…、何も知らないのだから…》



紘一の脳裏に、ベッドに横たわり…、呼吸器をつけ…荒い息遣いをしている女性の姿が浮かんだ…

《紘一、匡を赦してあげてね…
あの子は、何も悪くない…。
お父さんを赦してあげて…》

《お母さん! 1人にしないで…っ!》

《…お願いね…っ》

そぅ、ベッドに横たわる女性に泣きながらしがみつく…少年…


思い出したくもない記憶を思い出していた…


「……っ」
《母さん、俺は許せる程、馬鹿でもお人好しでもないょ…》


そぅ、思った途端…、口元から笑いが込み上げてきた…


「…許せる程、生半可な気持ちじゃない…」

と、そぅ呟くよう…に。。


だが…、吉澤との関係を知られたかもしれない…と、思うと…

どうにか、これ以上詮索させないようにしなくては…という思いが先だった…

悠夏を、黙せるのも時間の問題だ…

この、不可思議な関係も…、悠夏が2人の間に入ってから…関係性は変わってきた…それほど、自分にとって悠夏の存在は大きくなってきていた…

それは、吉澤にとっても…同じだ。。

「……っ」
《悠夏にとっても…、いつまでも隠し通せるモノではない…》