この部署に来て
1年が経った6月

僕はあなたと
海外出張へ行くことになった

あの頃よりも
好きな気持ちが増している

そんな中
あなたと2人で3日間もいれることに
僕は仕事ということを忘れ
ドキドキが止まらなかった


"仕事、はしゃいでる場合じゃない"


"はしゃいでません"


心の奥を見透かされているようだ
2人きりで何時間もいるとなると
少しはあなたのことを知れるだろうか


"そろそろ飛行機乗る時間ですよ"


"行くよ"


そう言って僕達は
飛行機に乗った

アナウンスが響き渡る
まもなく飛び立つそうだ
ふと横を見ると
あなたはいつにも増して強ばった顔をしていた


"大丈夫ですか?
飛行機怖いんですか?"


僕は冗談混じりに
からかうように言った


"今から言うこと飛行機飛んだら忘れて
手…握ってて"


なんだよ可愛すぎる
反則だ
躊躇いながらも話す
思ってもみなかった返答に
僕は少し動揺した

そっとあなたの手を握った
伝わる体温
ぎゅっと目をつぶる不安げなあなた
本当にずるい


飛行機が徐々に加速する
それに比例して
あなたは僕の手を強く握っていく


飛行機が安定した頃
あなたもいつもの雰囲気に戻った


"離して"


相変わらずだ
さっきまでの可愛いあなたはどこに行ったんだ


"はいはい"


もうあなたのその冷たさには慣れてきた
むしろ面白くなってきた


僕は窓から見える
真っ白な雲海を眺めながら
眠りについた


数時間後
僕はそっと目を開けた
それと同時にアナウンスが聞こえた
まもなく到着するそうだ

横目であなたを見ると
離陸の時と同じように
不安そうだった


僕は何も言わずあなたの手を握った
握り返される手

エンジン音でかき消される
心臓の音

地上へ近づくにつれて近づく
僕らの距離