そしてその年の12月
世間はクリスマスムードが漂い始めた頃

街中はキラキラと光るイルミネーションで彩られ
多くのカップルがあふれていた

そんな中、僕は1人で
彼氏へのプレゼント買いに来ていた

何をあげようか
歩き回って色んな店に入っては出てを繰り返した
少し休憩しようと思い
ベンチに腰をかけた

過ぎ行く人の波を眺めていた

すると視線の先に
あなたがいた
隣には男

あなたの
彼氏だろうか

楽しそうに
普段見せない笑顔でなにか話している

するとあなたは彼氏越しにいる僕に気づいた
男に何か言ってこっちに向かってきた


"何してるの"

そう聞かれた僕は

"彼氏のプレゼントを買いにきました
彼氏さんほっといていいんですか"

と問いかけた


"もういいの"


"もういいのって
どういう意味ですか"


"そのままの意味"


するとあなたは彼氏の元へ戻り
手を振った
そして僕の元に戻ってきた


"付き合う
プレゼント、買うんでしょ?"


もしここで断ったら
あなたの心が壊れてしまいそうな気がした

いつもは物事をはっきりときっぱりと
きつい口調で言ってくるくせに
そんな不安げに震えた声で言われたら
了承するしかない


僕はあなたと歩いた
何を話すわけでもなく
店に入ればバラバラに行動して

何のために付き合うと言ったのか
僕の心はまたしても
あなたに振り回される

無事にプレゼントを買い
あなたにお礼をと思い
マグカップをあげた


"いらない"


断られた
でも僕は見逃さなかった
ほんの一瞬
子供がサンタさんから
プレゼントをもらった時のような
輝くような目をしたことを


"なんでですか?
一瞬嬉しそうにしたのに
なんでいつも本当のこと言ってくれないんですか?"


"あたし彼氏と別れるから"


"答えになってません"


"お疲れ"


そう言い残すと
あなたは去って行った

僕の中で
あなたの存在が少しづつ
だけど確実に大きくなっていることに
僕はまだ気づいていなかった