扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜

「……」



(あれ?)



しばらくして、さっきまでいた蒼兎くんの姿が消えていた。



(どこにいったのだろう?)



キョロキョロと見渡しながら中庭から離れた場所のお花に囲まれたベンチに座っていた。



「すごいベンチ」



蒼兎くんの姿に私はそっと近寄った。



「ん?どうした?」



「あ、えっと。どこに行ったのかなって」



別に驚かすつもりはなかったんだけど、察しがいいのか声を掛ける前に気づかれた。



「うん。ここのベンチね、すっごく落ち着くんだよ」



「そうなの?」



「うん、マイナスイオンが溢れてる」



「へー」



(マイナスイオン…)



そのベンチにそんな効果があるんだ。



でも、お花って見ていると癒やされるのは分かる。



「座る?」



「えっ」



「おいでおいで」



そう言って蒼兎くんはポンポンとベンチを軽く叩く。



「………」



蒼兎くんに促されて隣に座ると、マイナスイオンが溢れている意味を理解してしまった。



(めっちゃ落ち着く!何これ!)



感覚的じゃなくて直感的に直にそう感じた。



「すごいでしょ?マイナスイオン」



「う、うん。すごいね、これもこの世界特有なの?」



「多分ね」



「へえ」



(………)



このベンチに座っているせいなのか、それともこの世界にいるせいかわからないけど、なんだろう心が優しくなるような穏やかな気持ちになる。



「楽しい?」



「えっ」



「今日」



「ああ、うん」



「そりゃあ、よかった」



「………」



私は蒼兎くんのようにポジティブにも前向きにも考えられるように思える人間ではない。



ただ、そんな人を前にしても羨ましいと思った事はなかった。



でも…。



「あの…今日はありがとう」


「! いいえ」


「……」


蒼兎くんはよく笑顔を見せる人だ。



そして笑顔がとても素敵でかわいい。



まるでお花を散らばせているかのように。



綺麗な人は笑顔も素敵なんだ。



(あ)



ふと思ってしまった。



「マイナスイオンって蒼兎くんも出てるのかも」



「ええ?俺が?」



「うん」



「そうかな?」



「笑うとお花みたい」



「いや、俺にそんな癒やし効果ないよ?あいつらなんて俺に酷い事しか言わないよ?あと、俺 結構 性格いい方じゃないよ?」



「うん、それは知ってる」



それは、今回ので思い知った。



でも、蒼兎くんは…。



「優しいから」



「………」