「わあ…洞窟ってこんなんなんだ…。意外と空気が冷たいのね」



「まあな」



暁さんは知っているかのような素振りで相槌を打った。



「もしかして、入った事ある?」



「何度かね…意味がわからんけど」



「……」



(やっぱりそうなんだ…)



「でも、なんで洞窟なんだろう」



「……シチュエーション狙いとか?」



「シチュエーション?」



「…………」



「………」



なぜか沈黙になる。



「ないな」



「ないね…」



これまでの事を考えると、どう見てもそんなシチュエーション狙いとかでやっているとは思えない。



そもそも恋愛物語とは思えない展開しかない。



しかも洞窟で恋愛的な展開などありえない。



「今度は何があるのかなー?」



さすがにさっきのじゃなければ別にいい。



確かに変なものばかりだけど、次は何が来るのか少しドキドキはあった。



「なんか楽しんでる?」



「えっ」



「面白がってる? この状況」



暁さんは少し引いたような目で見てくる。



「次は何が来るかなーって」



「はっ」



(鼻で笑われた!?)



なんか少し失礼だなって思うが、暁さんは「はあ」と呆れたため息を吐いた。



「いいねー。何も知らないって。得だわ、ある意味…」



「そうなの?」



「そうだよ」



冷たいけど諦めた感情が暁さんから感じた。



何に諦めたのだろうか。



よく分からない暁さんに何となく後ろめたさを感じた。



そういえば、蒼兎くんも音仲くんもそんな感じがあったような。