時には優しく…微笑みを

「…で、お前は何しに来たんだよ」

「いや、何しにって…」

「朝起きたら、櫻井が出かけてて…ここにいるのかなぁって…」

「いるわけないだろ?なんで男の俺の部屋に来るんだよ!」

「だよな…すまん」

「…なんかあったんだろ?朋香ちゃんに告白したのか?」

「な、なんでそうなんだよ!」

拓海は、諒太のマンションに来ていた。朝起きると、テーブルにメモが置かれていた。

【ちょっと出掛けてきます。 櫻井】

昨日、付き合おうか、と言って断られた手前、顔を合わせるのが不安だった拓海は正直、朋香が出かけてくれていてホッとしていた。

そして、昨日の朋香の態度が気になり、諒太の所に相談しに来ていた。

「で?告白したのかよ!」

「だ、だから、なんでそーなんだよ。お、俺は別に櫻井の事…」

「は?何言ってんだよ。お前の片思いだろうが?3年待ったんだろ?何言ってんだよ、今さらだろ」

「…っ、そ、それは…」

「情けねーやつ。まだ告ってねーのかよ」

「…言える訳ないだろ、俺みたいなおっさんが、10も離れてるんだぞ」

「年なんか関係ないんじゃないの?菅野君、諒太の言うように情けないわね。彩奈の事が原因?」

諒太の部屋に一緒にいた結子が、話に加わった。

「佐々木…彩奈の事はもう、過去の事だから、気にもしてないよ。逆だよ、迷惑なぐらいにね」

「じゃ、なんで朋香ちゃんに何の遠慮がいるの?年は関係ないわよ、それを言い訳にしないでよ」