時には優しく…微笑みを

「優弥さん!」

外に出された私は、ドアを叩いて優弥さんの名前を呼んだけれど、迷惑そうにドアを開けた優弥さんは、人が変わったような顔になっていた。

「ちょうどよかったよ。俺、東京に戻るんだ。それまで、って思ってたから別れよう。あ、それも返して…」

返して、と私が握っていた合鍵を手から奪うとキーホルダーだけを私に返してきた。

「なんで?私の何があかんかったの?」

「二度と俺の前に顔見せんなよ」

「…っ、待って!」

無情にもドアは閉められてしまった。
ドアの向こうから、さっきの女の人の笑い声だけが聞こえていた。

それから、何処をどう歩いて帰ったか覚えていない…

なんで、なんでなん。
期限付きってなんなん…
本命があの人って、なんなん…

出ない答えを誰に求めたらいいんだろう。

一人暮らしの部屋は、真っ暗で誰も迎えてくれない…

「…っ、うっ、うっ…あー」

大人になって初めて声に出して泣いた。
泣きながら、優弥さんに電話したけれど電源が切られていた。

ダメなん?もうダメなん?

気がつけば朝になっていた。

「っ、頭痛っ…泣きすぎた…」

重い体を起こして洗面台に行った。
鏡を見て、絶句した。

「な、なに、この顔‥学校行けんやん…ハハッ…」

泣きすぎた顔は目が腫れてとんでもない事になっていた。