時には優しく…微笑みを

合鍵で部屋に入った私の目に男女の靴が一つずつ。

友達でも来てるんやろか?
そう思った。

「優弥さん…」

そう言いながらドアに手をかけた私は固まってしまった。

「…っ、いいの?こんな事して。彼女来るんじゃないの?」

「彼女?あぁ、今日はバイトって言ってたから来ないよ。それに来たって別に?俺、彼女いないし」

「やだぁ、ひどい人ね。彼女聞いたら泣くわよ?」

「そんな事より、俺もう我慢出来ないよ…これだけ煽ったんだから、責任取ってもらうよ?ん…っ」

「ん…っ、あっ…」

寝室ではない、リビングから聞こえる男女の声。
一つは優弥さん、女の人は誰?彼女いないし…って?

見たくない、聞きたくない…
そうは思っても、その場から動けなかった。

私は後ろに動く事も出来なかった。

な、何これは何…

持っていた買い物袋を落としてしまった。

「ん、誰だ!」

物音に気がついた優弥さん。

「っ、やだ…誰かいるの?」

ドアの向こうで声が聞こえる…

「ちょっと待ってて…」

優弥さんの声がドアに近づいてきた、そして目の前のドアが開かれた。

「…っ、朋香…なんで、バイトじゃ…」

「……っ、休みになった…から」

開いたドアから優弥さんは、上半身裸だった。その後ろにいる女の人の姿が目に入った。

何も身につけてなかった。
シーツの代わりのように、優弥さんのシャツを体にかけていた。

その相手の女の人の顔は、今でもそこだけは思い出せないでいた。

「やだ。彼女来ちゃったの?フフ」

「っ、帰れよ」

「ゆ、優弥さん…こ、これはどう言う事なん…」

「うるさいな、いいとこだったのに。邪魔だから帰れよ」

「な、なんでなん…」

「あぁ、もぅ!帰れよ、ったく…」

私はそのまま優弥さんに外に出されてしまった。