時には優しく…微笑みを

神木物産…
どうしてこんなにも関係してくるんだろう。

思い出したくもない過去…

神木物産…

そう、私が付き合ってた彼(ひと)が働いていた所が、神木物産だった。

加藤優弥…
私より7つ年上で私が初めて付き合った人…全てを捧げた人。
東京から大阪支社に転勤してきて、大学の友達が誘ってくれたコンパで知り合った。
初めは、私がその場についていけてなくて、浮いた状態だったのを見かねて声を優しくかけてくれたのが、始まりだった。

「馴染んでないね?こういうの初めて?せっかくだし楽しもうよ」

「あ、はい。初めてで…」

それが最初だった。
そんな出会いから始まって、1年付き合った。付き合う事も、何もかもが初めてだった。私には幸せな1年だった。そして、その幸せが続くものだと思っていた。
だけど、その彼が、2年の期間限定で大阪支社に来ていたなんて私は知らなかった。

その日、私はバイトの休みを代わってほしいと連絡を受けて、急遽休みになったので、優弥さんの家に行った。
いつもと変わらない、そのはずだった。

急にバイトが休みになった私は、優弥さんにご飯でも作ろうと、近くのスーパーで食材を買って家に向かった。

「びっくりするやろなぁ、優弥さん」

意気揚々と、彼のマンションの部屋を開けた。

「優弥さん…」

ドアを開けて声をかけたけれど、返事はなかった。

「優弥さん?…ん?この靴誰の…」

見た事のない男女の靴が、玄関に無造作に脱いであった。