時には優しく…微笑みを

罵倒…

私の中でうっすらとした相手の人記憶。
思い出したくもない、あの場面。

でも脳裏からは離れない、消えない。

どうして…
っ、ダメ…苦しい…
はぁ、課長…

私はそのまま意識を手放した。


「…井!櫻井!」

誰?私を呼ぶのは…

目を開けると、目の前に課長の顔があった。

「あ、あ…」

「よかった…びっくりさせんなよ。ここに来てみたら倒れてるから、何かあったのかと思うじゃないか。また過呼吸か?」

ち、近いです。課長…
また過呼吸で倒れそう…

黙って頷くと、課長はそのまま私を抱きしめてくれた。

「心配させるな。何を思い出していたんだ?」

「っ、ご、ごめんなさい。あ、彩奈さんを見て…自分の事を思い出してたんです」

彩奈と名前を出した時、私を抱いていた腕に力が入るのが分かった。

「さっきはごめんな。あいつ、まさか担当代わってくるなんて思わなくて…櫻井が俺の嘘に付き合ってくれて助かったよ。櫻井が行ってから、うるさかったんだよ。部下に手を出したのか、とかな」

え、自分の事を棚に上げて何言ってるの…信じられない。

「誤魔化したけど、昨日諒太が言ってたように気をつけた方がいい。俺から離れるな、分かったな?」

私は、何度も首を縦に振った。