時には優しく…微笑みを

「でも課長、そんなプライベートな事を私に話をしていいんですか?いくら私が今課長と暮らしているからって、そこまで話しなくても、私言わないですよ?どうしてなんですか?って。そんな事を言える権利もないじゃないですか」

言わずにはいられなかった。
私だって過去の事は、やっぱり話辛い。ましてや会社の、しかも上司である課長になんて言える訳もない。
それを課長は部下である私に話をした、という事が引っかかっていた。

課長は飲んでいたコーヒーをテーブルに置いた。

「なんでかな、櫻井には話したかったんだ。おかしいだろ?笑ってくれてもいいよ。こんな話みっともないしな。理由がいるんだったら、櫻井だから話したんだよ。それじゃダメか?」

っ…
時間が止まったように感じられた。
私だから、それだけで私は嬉しかった。

少しは課長の中で、特別な人になれた事が…。
特別?
ちょっと待って、特別って…この気持ちは。

「櫻井…やっぱり部屋が決まったら出て行くのか?」

「っ、え?」

「あ、いや、今のは忘れてくれ。なんでもない…」

今、課長なんて言ったの?
私はこの時、課長がなんて言ったのか、はっきりと聞こえていなかった。
慌てて忘れてくれ、と言っていたけど、なんて言ったんだろう?