時には優しく…微笑みを

店が騒がしかったおかげで、誰も私が泣いてる事に気付いた人はいなかった。

少しすると私も落ち着いたのか、ながれていた涙も止まっていた。

「すみません。ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫なんで。私、この辺で失礼します。あ、お金これ置いていくので…」

「待って」

結子さんが、その場を立とうとした私の腕を掴んだ。

「場所変えよう。諒太、出るからお金払ってきて」

「あ、あぁ。わかった」

そう言うと、仲川さんは支払いをしに伝票を持ってレジに向かった。
結子さんは、私の体を支えると店の外に出た。

そしてタクシーに乗ると、あるダイニングバーの名前を伝えた。

タクシーに乗っている間、誰も言葉を発しなかった。
10分ほどして、目的のダイニングバーに着くと、結子さんは私を支えるとお店の中に入った。
そこのお店は、静かな落ち着ける雰囲気の漂う所だった。

「ここは個室もいくつかあるし、安心出来る所なの。ここだったらゆっくりしゃべれるでしょ?」

「は、はい…」

「ごめんなさいね。私が興奮したもんだから。でも、このバカも悪いのよね」

「すみません…冗談が過ぎました」

頭を下げる二人に逆に申し訳なくなってしまった。

「あ、あの、すみません。私が悪いんです。びっくりしますよね。急に泣いて…」

少し落ち着いたのもあって、私は仲川さんと結子さんに、どうして泣いたのか、話をした。