時には優しく…微笑みを

いきなり言われた言葉に固まってしまった。

男性に対しての免疫がなさ過ぎる、といつも七海から言われていた事がここでも、突出していた。

「あ、あの…いないですけど…」

「まぁ、その反応見てたら分かるけど、いない感じだよね」

どうしたらいいんだろうか、誤魔化すように手元にある書類を手に取った。

「あのさ、朋香ちゃん」

「え?は、はいっ」

「…やっぱりいいや、どこか見たい所見つかった?」

「え、あ、ああ。…ここ、なんかいいですね」

仲川さんが何を言おうとしたのか、私は深くも考えていなかった。深入りしても仕方ないと。
気に入る場所はあった?と聞かれ、気になった所をいくつか挙げた。

「3つか、今週土曜日でも内見行く?この距離なら全部見られるよ。どうする?」

「あ、じゃあお願いしようかな。いいですか?」

「いいよ。じゃ、10時に拓海ん家に迎えに行くから、用意しててくれる?」

「分かりました。すみません、ありがとうございます。こんなに早く、探してもらえるなんて、ほんとに助かりました」

「そう?じゃ、この後食事に付き合ってよ?いいよね?」

「え、あ、はい。あ、課長に連絡してもいいですか?」

「過保護だね〜、俺から連絡入れようか?」

「いえ、私から入れますから…」

そう言って課長に電話をかけた。

でも、何度かけても呼び出し音が鳴るだけで、課長が電話に出る事はなかった。