駐車場に停めてある車を、探すのに戸惑ってしまった私は、課長が待ってる所に戻るのが遅くなってしまった。

少し急いで戻った。

「あ、課長…」

課長の姿を見つけた私は、声をかけようと近寄った。

「久しぶりね、拓海」

「…っ、あ、彩奈」

課長が、誰かと話をしていた。
近寄る事が出来ず、私は柱の陰に隠れてしまった。
誰、だろう。
彩奈と課長は呼んでいた、久しぶりねって、相手の女の人も…
もしかして…、元カノ…なのかな。
私は、彩奈と呼ばれた人を見る課長の表情が気になっていた。

「拓海…一人で来たの?」

「っ、いや…」

言葉を濁す課長に、心がドキドキと音を立てていた。
なんで、私の心が慌ててるの。

「あ…」

私は人の波に押され、二人の前に出てしまった。

「櫻井…」

「あはは、迷子になってしまって…、遅くなってすみません」

取り繕うように話をする私に、課長はいきなり私の手首を掴むとその場から離れようとした。

「え?あ、あの…」

「クスッ、彼女と来てたの?ごめんなさい。引き留めて、またね」

「…あぁ」

あ、まただ。
昨日、見たあの表情…
課長?

なにも言わず、課長はその場から離れると、駐車場まで無言で私の腕を掴んだまま歩いていった。

「…か、課長…痛いです」

「え?あ、ごめん」

私が言った言葉で、腕を離した課長。
その掴まれた手首は赤くなっていた。