「大丈夫か?」

「はい、緊張してますけど。大丈夫です」

手土産も持ったし、大丈夫。
笑顔で、そう…

拓海さんは、玄関を開けた。

「ただいま!母さんいる?」

バタバタッ…
足音が聞こえてきた。
来た。

頭をさげようとしたその時…

「おかえり!拓海。そちらの方ね?いやー可愛らしい子じゃないの。さ、上がって」

「あ、あの。櫻井朋香です。今日はご、ご挨拶に…」

「いいの、いいの。さ、上がってちょうだい」

「あ、あの…」

話す間もなく、お母様に腕を引っ張られてしまった。

「お、おいっ。母さん!」

拓海さんが注意するも、お母様は怯むことなく、私を奥の部屋へと引っ張っていた。

「私ね、男ばっかだったでしょ、子供が。女の子が欲しかったのよね。気がついたら、ほらこんな背の高い、むさ苦しい男ばっこりじゃない?だから拓海から話を聞いた時から、早く会いたくて仕方なかったのよ!」

す、すごい…
私の母よりも、マシンガントークだ。
あまりの勢いに私は、喋れなくなってしまっていた。

「母さん、びっくりしてるじゃないか。話聞いてやれよ」

追いかけてきた拓海さんが、お母様から私を引き離してくれた。
私は、慌てて持ってきた手土産を渡した。