時には優しく…微笑みを

目の前を何度も電車が過ぎて行っていた。
私はその場から動けなくなっていた。

どうして?横浜にいると思っていたのに、今ここで会わなくてはならないの?

それに、どうしてあんな別れ方をしたのに、平然と声をかけられるの?
信じられない。

「はぁ、苦しい…息が…」

冷や汗と共に、意識が遠のくのが自分でも分かった。

私はその場に倒れてしまった。

耳に周りの人達が騒いでいるのが、遠くで聞こえていた。



「朋香?はよ帰っといで。大阪の方がええやろ?」

お母さん…私、大阪に帰ろうかな。
疲れたわ、やっぱり東京なんか私には合わへんかったみたい…帰ってもいいかな?


夢を見ていた。
大阪で待ってくれている母、東京に出てくる時に、何も言わず送り出してくれたけど、帰るといつも私が好きな料理をたくさん作って待ってくれている。

帰っても怒らへん?お母さん。


誰かが私の手を握ってくれていた。
温かい、私はこの手が誰のものか分かっていた。

拓海さんだ。
いつもこんな風にして、私を優しく包んでくれる。

幸せ…

「朋香…何があったんだ…」

「た、拓海さん…」

私は目を開けた。
目の前に心配するように、顔を覗き込んでいる拓海さんがいた。