時には優しく…微笑みを

同棲すればいいって、誰と誰?

誰なのー!

課長も慌てて否定していた。

「え?彼女じゃないの?なんだ、てっきり拓海の彼女だと思ったのに、チッ面白くねーな」

いや、最初に会社の部下って課長言ったよね?
言ってたよね?
心の中で何度も叫んでいた。

「あのなー諒太。ちゃんと部下つったろーが。ほんとに人の話ちゃんと聞かねーんだから、そんなんでよく接客業出来てるよな」

え?
か、課長?
いつものきちっとした課長じゃなかった。確実に崩れてる、ううん。いい意味で素の課長がそこにいた。

「拓海、櫻井さん驚いてるよ。いつもの菅野課長じゃないって…」

「……あ、いや、そのだな」

「ま、おせーだろ。いいじゃん。櫻井さん、拓海って普段はこんな感じなんだ。学生ん時は結構悪かったし、今じゃ課長だからさ、お堅いだろ?」

「は、はぁ」

「諒太、もういいって…」

「いや、あ、あの。素の、か、課長が見られてよかった、かなーなんて。あはは」

つられて、課長も笑っていた。

「内緒な、櫻井。俺とお前だけの」

「は、はい!」

課長の組んだ足が私の膝に当たった。
多分、ワザとだ…
え?と思った瞬間、目が合った課長は私にだけ分かるように笑っていた。