時には優しく…微笑みを

運転中、課長は一言と喋らなかった。
私はその、課長の横顔をチラチラと盗み見していたけれど、どのタイミングで声をかけていいのか迷った。

「あ、あの課長…」

「ん、あ?どうした?」

「後でお話があるんですけど…聞いてもらえますか?」

「今じゃ…ダメなのか?」

「あ、あの…落ち着いて話がしたい、ので…」

「分かった。もうすぐ着くから…」

そう言って、また課長は黙ってしまった。

課長が何を考えているのか、もしかしたら、私の思いが迷惑になるかもしれない、そうなった時は彩奈さんの事があったとしても、私は課長の家から出て行こう、そう覚悟した。ここにいたらダメだと。課長の優しさにこれ以上、甘えてはいけない。

優弥さんとの別れから、3年…
こんな気持ちになれた事が、私は嬉しかった。人を好きになれた事が。


助手席から流れる外の景色を見ながら、私は考えていた。

♪♪♪♪♪♪♪

課長の携帯が鳴った。
悪い、と言いながら電話に出た課長の顔が険しくなった。

「…で?何のようなんだ?忙しいんだが?」

怒ってるような口調。
誰からだろう?
そう思った私が、その電話が誰からだったのか、考えるのに時間はかからなかった。